尾崎 紀夫 スペシャルインタビュー

スペシャル対談 スペシャル対談

脳を外部から刺激する治療法も、選択肢の一つ。

舟橋岩田先生はアメリカ精神医学会や世界生物学的精神医学会などに参加されていて、新薬や治療法などの最先端の動向についても詳しいとお聞きしています。新しい治療法は、以前と比べてどのように変わってきているのでしょうか?

岩田精神病の研究は、ブレイクスルーがあまりありません。製薬会社は新しいアイデアがない状態で新しい薬を作ろうとすると非常にコストがかかるため、ほとんど撤退しているというのが実情です。ですから、治療薬についてはなかなか明るい将来がないというのが、米国をはじめとする世界の状況だと思います。その一方で、うつ病やストレス障害については、ケタミンの即効性が改めて認められて以降、再び注目を集めています。脳内を少し幸せにするホルモンが出ることがわかっており、そうしたカンナビノイドと呼ばれている物質を基に新たに治療薬として使えないかという研究が進んでいます。この様に、うつ病やストレス障害に効果のある薬物に関して言えば、新たな方向性も開けていくのではないかと思います。

舟橋薬以外の新しい治療法には、どのような物があるのでしょうか?

岩田現在行われているのは、やはり脳を外部から刺激する方法です。刺激する方法は磁気や電気など、いろいろあります。私たちももちろん、微量の電気を流す電気けいれん療法をしています。こうした手法はかなり研究されており、様々な方法が開発されている状況です。今後は、そういう「ニューロモジュレーション」と呼ばれている治療法が、精神科の臨床で標準的に使われるようになるのではないかと考えています。

舟橋頭外皮を通して脳に磁気をあてる治療法が今度保険点数化されるようですが、それはどうなのでしょう。治療的な効果はあるのでしょうか?

岩田現在、中等度までのうつ病に対しては有効性が確認されていますので、使われるようになると思います。もちろんお薬と同等だとは思いますが。その反面で、薬を飲む事は体に異物を入れる事になりますから、副作用を引き起こす危険性がゼロではでありません。磁気刺激も物を入れるわけではありませんが、外部から刺激を与える治療法なので賛否はあります。しかし、いろいろある選択肢の一つとして、あっても良いのではないかと私は思っています。

藤田医科大学 医学部医学部長
医学部精神神経科学教授

岩田仲生

プロフィール

1989年名古屋大学医学部卒業、1993年医学博士取得。
1994年名古屋大学医学部付属病院精神科医員、1996年米国National Institute of Health Visiting Fellow。帰国後、1998年より藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)医学部精神神経科学講師、2002年助教授を経て、2003年より同大学医学部精神神経科学教授に就任。
2011年同大学副医学部長、2011年学校法人藤田学園 理事長席付補佐に就任。
2012年藤田保健衛生大学病院(現藤田医科大学病院) 副院長、2015年同大学医学部 医学部長、2016年同大学 副学長に就任。
日々、研究と診療に精進されており、その研究は世界的評価を受けている。特に、精神医学一般、臨床精神薬理、気分障害の短期精神療法(認知行動療法、対人関係精神療法、短期力動的精神療法)、統合失調症の総合的治療・リハビリテーション、臨床遺伝医学などを基盤として、様々な疾患への総合的治療に対応されており、精神科の新しい治療展開を模索されている。