尾崎 紀夫 スペシャルインタビュー

スペシャル対談 スペシャル対談

復職後も再発しないためには、リワークが必要。

舟橋ルーセントジェイズクリニックを開設して11年経ちます。開設当初から岩田先生のご指導を受けてリワークプログラム、リワークセンターを作って、運営しています。僕はリワークセンターの必要性を強く感じていますが、一部の診療所の先生の中には「リワークという機能は一切必要ない」という方がいらっしゃることも事実です。リワークを行うことによって再発率が減っているというデータもありますが、リワークプログラムについて、岩田先生はどのようにお考えでしょうか?

岩田30年、40年前のうつ病は、まさに飲まず食わず眠らずで入院しなきゃいけないイメージでしたが、今のうつ病は様相が大きく変わっています。その背景には、産業構造が大きく変わって、働く環境も大きく変化した事を考慮に入れないといけない点があげられます。多くの日本の企業は非常に生産性が低い。今、働き方改革を国がやり始めていますが、あれは要するに「日本の生産性が低い」と言う事と表裏なのです。長時間労働の割には効率が悪いのが、日本の多くの企業の実態です。だからこそ、日本の皆さんが働く環境をもっと高効率化することが、実は求められているのです。これは、日本の政府や企業が好き好んでやっているというより、それをしなければもう日本企業が勝ち残れない、生き残れないという事です。世界の流れの中で、そうなりつつあります。ですから、多くの人が非常に高いストレスを感じる状態で働き続けなきゃいけない状況になっています。以前は精神科にかかって休職した人が復職した時に、「窓際のところに置いてあげたらどう」という様なことを言う先生もいらっしゃいましたが、今ははっきり言って、頑張ってる企業にはそういう窓際の暇なポジションが全くない状況です。そうなると、普通にしていたらストレスに耐えられないために病気になってしまうわけですから、病気で休んだ方がまた復職して働き続けるためには、当然ですが病気を治療するだけじゃなくて、そのストレスに対する「レジリエンス」と言っていますが、ストレスを受け止めてさらに活躍できる環境まで作っておかないと、また病気になってしまい、再発を繰り返すということになるわけです。そうしたストレスに強くなる治療は、現状では薬ではできないわけで、リワークプログラムの中でレジリエンスを付けていくしかないのが現実です。

舟橋全くストレスが無い環境で働ける人ならリワークは必要無いかもしれませんが、現実にはそういう人はいないでしょうね。

藤田医科大学 医学部医学部長
医学部精神神経科学教授

岩田仲生

プロフィール

1989年名古屋大学医学部卒業、1993年医学博士取得。
1994年名古屋大学医学部付属病院精神科医員、1996年米国National Institute of Health Visiting Fellow。帰国後、1998年より藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)医学部精神神経科学講師、2002年助教授を経て、2003年より同大学医学部精神神経科学教授に就任。
2011年同大学副医学部長、2011年学校法人藤田学園 理事長席付補佐に就任。
2012年藤田保健衛生大学病院(現藤田医科大学病院) 副院長、2015年同大学医学部 医学部長、2016年同大学 副学長に就任。
日々、研究と診療に精進されており、その研究は世界的評価を受けている。特に、精神医学一般、臨床精神薬理、気分障害の短期精神療法(認知行動療法、対人関係精神療法、短期力動的精神療法)、統合失調症の総合的治療・リハビリテーション、臨床遺伝医学などを基盤として、様々な疾患への総合的治療に対応されており、精神科の新しい治療展開を模索されている。